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一、1.当問では、乙が直接に契約を締結した取締役Cは実際に代表取締役として登記されず、Aのみが代表取締役として登記されているに過ぎない。そのため、Cの業務執行行為による法律関係は甲株式会社に帰属しているとは考えられないため、原則論では甲株式会社と乙の間には法律関係は存在せず、甲株式会社は乙に対して、当該取引に関する責任を負う必要がないとも考えられる。
2.ただ、Cは常日頃から「専務取締役」と名乗るなどしていたため、会社内部に関して詳細な事情を知らない乙のような第三者はそのような状況下では、Cに代表権があると信じて甲株式会社と取引をせざるをえないというのが通常である。そのため1の原則論に照らすと取引の安全を害してしまう。
二、1.そこで商法262条が問題となる。262条とは、本来代表権を有していないが、会社の代表権を有すると認められる名称を有している取締役の業務執行行為に対して、行為の相手先の第三者が善意の場合は当該会社が第三者に対して、責任を負う必要があることを示す。その制度趣旨は上記一、2.で挙げたように、第三者の取引の安全を保護する必要があることがあげられる。
2.しかし、262条による会社の責任が生ずるためには、次の3つの適用要件をすべて満たす必要がある。すなわち適用要件として、@取締役が代表権を有すると認められるであろう外観を有していること、A当該取締役がそのような外観を有していることに対して会社に帰責性が生じていること、B当該取締役が代表権を有していると信じていること、の3つである。
3.この適用要件を当問のケースにあてはめて考えると、@外観性については、Cは常日頃から甲株式会社の「専務取締役」として行動していた以上、その要件は当然あると考えられる。また、A会社の帰責性については、正式に代表権を有していないのに常日頃Cが代表権を有するかのような名称を付していた以上、本来なら他の取締役は取締役会を招集する(259条の3)などして会社側からそのような名称を付すことを止めさせる必要があり、その意味で会社側に帰責性があるといえる。B第三者の信頼性として、問題文中より乙はCに代表権があると信じているとの旨があるから、その要件は満たされるといえる。よって上記より当問では262条により当然にして甲株式会社は乙に対して表見代表取締役Cの業務執行行為に関して、乙に対して責任を負う必要があると考えられるはずである。
三、1.ただ次に問題となるのは、甲株式会社は登記簿上、Aのみを代表取締役として登記し、Cは代表取締役として登記されていないため、第三者たる乙の当該事項に関する悪意が擬制され(12条)、甲株式会社は乙に対して、Cは代表取締役でないことを理由に乙に対して責任を負う必要がないと主張できるとも考えられる。すなわちここで12条と262条の関係が問題となる。
2.この点、私は262条が12条の例外規定であると解すべきであると考える。すなわち、262条は会社にとって第三者の取引の安全をはかる趣旨がある以上、第三者が会社と取引をするたびに代表権を有するであろう人物が真実の代表権を有しているかどうかに関して、登記簿を閲覧するなどして一々チェックことは現実的ではないと考えられるからである。
3.そこで当問のケースに当てはめていくと、第三者たる乙は12条よりもまず262条を優先させることにより、上記262条の3つの適用要件が満たされている以上、保護されるべき対象であるといえ、その結果、甲株式会社は乙に対して、当該契約について責任を負わなければならない。
以上。
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